ハッシュ関数の不可逆性（Irreversibility）は、ハッシュ値から元のデータを逆算することが非常に困難である性質です。ハッシュ関数はデータの一方向性を持ち、元のデータからハッシュ値を計算することは比較的容易ですが、ハッシュ値から元のデータを復元することはほとんど不可能です。

不可逆性の重要な特徴は以下の通りです。

1. 一意性: 異なる入力データに対しては、異なるハッシュ値が生成されます。同じハッシュ値が生成される衝突は理論的には可能ですが、優れたハッシュ関数は衝突が起きにくいように設計されています。
2. 変更の検知: 元のデータがわずかにでも変更されると、生成されるハッシュ値も全く異なる値になります。データの改ざんや破損の検知に利用できます。
3. 安全なパスワード保存: パスワードのハッシュ化は、平文のパスワードを保存せずに安全に認証を行う方法として利用されます。ハッシュ値は逆算が困難であるため、外部からの不正なアクセスによってパスワードが漏洩しても平文のパスワードを取得されることはありません。

ただし、ハッシュ関数の性質上、異なるデータでも同じハッシュ値が生成される衝突（Collision）が理論的には存在する可能性があります。安全なハッシュ関数は衝突が起きにくいように設計されていますが、実用上は衝突が完全に避けられないことを考慮する必要があります。